いつしか皆、バスで眠れる体質に

2012.01.14

ホテルに一泊はしたものの、疲れが完全に消えたわけではなかった。パトナーの街では、バングラデシュのダッカを出発して以来、六日ぶりにビールを飲み、泥のように眠ったが、再びバスに乗ると、激しいエンジン音や車の揺れが、また疲労を呼び起こすようだった。それはカメラマンやH君も同じようだった。韓国、中国とバスに揺られていたとき、H君は緊張でほとんど車内で眠れなかったようだが、人間、目覚めても、目覚めてもバスのなか……といった旅をつづけていると、旅の緊張などどこかに霧散し、平気な顔でバスのなかで舟を漕ぐようになるものだ。

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これを進化といっていいのか、そこまでは堕ちたくはないと思うのはそれぞれの勝手だが、そんな意識とは関係なく、気がつくと眠ってしまっているのだ。しかし同じ眠るにしても、このバスはきつかった。背に体を預けることが難しいから、そのまま寝るか、前の背に頭をうつける体勢をとるしか方法はなかった。それでも寝てしまうのである。前の席に座っているH君の体が、左右にゆっくりと揺れているのがわかる。いま、どんな夢を見ているのかはわからないが、この旅で、バスのなかで眠ることだけはできる体質になってしまった。