英国ではラゲッジ、アメリカではバゲッジと言うが、英国でも船などに積み込むものに関してはバゲッジを使う。これは旅が船や馬車によっていた時期の名残と考えられる。旅とは日常から非日常への脱出であるが、だが日常を旅先で再現するために身の回りの品々をコンパクトに携行する技術を求めた。そこから荷造り用の木箱が発達し、現在のトランクに発展していくこととなる。各地の大使館や領事館への異動発令を受けた外交官たちは、木箱に革を貼ったものに荷物を詰め旅立っていったのだろう。しかし、重要書類は肌身離さずに携行することが肝要であり、それに応える小型のケースが求められた。これがアタッシェケースの原型である。1851年、ロンドンのクリスタル・パレスで催された万博に、英国の皮革製品メーカーであるブライアン・フィニガンはビジネスケースを出品した。木製のハードケースに革を貼ったもので、堅牢さと使い勝手の良さが評価され、金賞を受賞している。旅先ではもちろんのこと、馬車や船のなかでデスクのような機能を発揮する。このケースがやがてアタッシェケースとして定着していくのだ。ちなみにアタッシェケースという、弟が一般に登場するのは、1904年の英国でのことだった。